結論から書きます。子育て中に趣味を続けられるかどうかは、意志の強さではなく家庭の中で何を交換するかで決まります。「やる気があれば時間は作れる」という話ではありません。
私は3児の父で、いま週2回、社会人のバスケットボールチームで活動しています。ただ、ずっと続けられていたわけではありません。3人目が生まれてから1年半、チームを離れていました。
この記事では、なぜ離れたのか、どうやって戻れたのか、戻ってから何を決めたのかを書きます。「子育て中の趣味は諦めるしかないのか」と調べている人に、いちばん役に立つのはそこだと思うからです。
わが家の場合|水曜と金曜、20時から
練習は水曜と金曜の週2回、20時から。仕事が終わったあとの時間です。
わが家は子どもが3人。上2人が小学生で、末っ子は3歳手前です。夕方から寝かしつけまでが、1日でいちばん忙しい時間帯になります。
つまり私は、その時間をまるごと妻に任せて出ていくことになります。ここはごまかしようがありません。だからこそ「行っていいかどうか」ではなく、「その分をどうするか」を決める必要がありました。
3人目が生まれてから、1年半チームを離れていました
後ろめたさを感じたことはあります。ただ、それ以前に物理的に無理な時期でした。
息抜きは必要だと思っています。今もそう思っています。でも、必要だからといって取れるわけではない時期がある。3人目が生まれてからの1年半が、まさにそれでした。
ここで大事だったのは、やめたのではなく、離れただけという点です。退会はせず、チームに籍を残したまま活動だけを止めていました。結果的に、これが戻れた理由のひとつになりました。
戻れたのは、妻が「行っていいよ」と言ってくれたから
少し余裕が出てきたタイミングで、妻のほうから「行っていいよ」と言ってくれました。それで最近また行けるようになっています。
正直に言うと、ここは運が良かった部分だと思います。自分から「そろそろ行きたい」と切り出していたら、もっとこじれていたかもしれません。これは私の推測ですが、余裕がない側にとって「行きたい」は、どんな言い方をしても要求として届いてしまう気がします。
なので、この記事で本当に書きたいのは、戻ってから決めたことのほうです。こちらは自分でコントロールできます。
復帰してから決めた4つのこと
① バスケの日は、車で仕事に行く
ふだんは自転車通勤ですが、バスケのある水曜と金曜だけ、車で出勤します。そして仕事終わりに、そのまま体育館へ向かいます。
一度家に帰ってから出直すと、往復の時間がまるごと消えます。しかも、家がいちばんバタついている時間に人が出入りすることになる。「ただいま」と言って15分後に「行ってきます」と出ていく形は、自分でもやりづらいです。
やっているのは単純で、家を空ける時間そのものを短くするという発想です。行く回数を減らさずに負担だけ減らせるので、いちばん効きました。
② バスケのない日は、なるべく早く帰る
週2回出ていくぶん、それ以外の日はできるだけ早く帰るようにしています。
これは埋め合わせというより、前提を揃える作業だと思っています。週5日ずっと遅い人が週2回バスケに行くのと、ふだんは早い人が週2回行くのとでは、同じ「週2回」でも家庭側の受け止め方がまったく違います。
③ 帰ってきたら、あとは全部やる
帰宅してからは、そこから先は全部パパがやると決めています。お風呂も、寝かしつけも、片付けも。
「今日は手伝うよ」ではなく、帰ってきた時点で交代するという形にしているのがポイントです。手伝うという言い方をしている限り、担当は相手のままなので、相手の負担は実際には減りません。
④ 妻にも、一人で出かける夜を作る
これが4つの中でいちばん大事です。バスケのない平日の夜に、妻が一人で出かける時間を作っています。
理由ははっきりしていて、自分だけが出ていく状態が続くと、他をどれだけ埋めても不公平感は消えないからです。家事を多めにやるのも、早く帰るのも、種類が違うものを返しているにすぎません。
いちばん確実なのは、同じ形で返すことでした。「一人で出かける夜」には、「一人で出かける夜」で返す。これを始めてから、行くときの後ろめたさがかなり軽くなりました。
数字で見ると、パパの時間はどうなっているのか
ここまでは、わが家の話です。自分の感覚がずれていないか気になったので、統計を調べてみました。総務省の「社会生活基本調査」(令和3年)です。
まず、男女全体の1日の自由時間(3次活動)から。
- 男性 … 6時間34分
- 女性 … 6時間0分
これだけ見ると「男のほうが余裕があるじゃないか」という話になります。ただ、これは全年代をならした数字です。子育て世代だけを取り出すと、景色が変わります。
6歳未満の子どもがいる共働き世帯の、家事関連時間(家事・育児・買い物などの合計/週全体平均)はこうです。
- 夫 … 1日1時間54分
- 妻 … 1日6時間31分
そして、この夫の数字の推移がなかなかのものでした。
平成18年 57分 → 23年 68分 → 28年 1時間22分 → 令和3年 1時間54分。15年で2倍になっています。
つまり、いまのパパは昔のパパよりはるかにやっている。これは事実です。数字がはっきり出ています。
ただ、同じ資料の別の列に、こうも書いてあります。共働きでも、家事関連時間の77.4%を妻が担っている。妻が働いていない家庭では84.0%です。
ここが大事なところだと思いました。「自分は昔の父親よりやっている」は、家庭の中ではまったく通用しません。妻が比べているのは20年前の父親ではなく、いま目の前にいる私だからです。
「行かせてもらう」ではなく「交換する」に切り替えたのは感覚でやったことでしたが、あとから数字を見て、方向としては合っていたのだと思えました。
「行かせてもらう」ではなく「交換する」
4つ並べてみて気づいたのは、全部が交換だということです。
- 車で出勤する → 家を空ける時間を返している
- 早く帰る → ふだんの在宅時間を返している
- 帰宅後は全部やる → 手間そのものを返している
- 妻の夜を作る → 同じ種類の自由時間を返している
「行かせてもらっている」と思っているうちは、後ろめたさが消えません。かといって感謝を伝えるだけでは、相手の負担は1グラムも減らない。減らせるのは、時間と手間を実際に返したときだけでした。
ここは私の実感なので、家庭ごとに形は違うと思います。ただ「何を返すか」を先に決めておくと、行く日に言い訳を考えなくてよくなる、という効果は間違いなくありました。
妻の側から見ると、この4つはどう映るのか
ここまでは全部、出ていく側の話です。逆の立場からも書いておきます。この記事にたどり着く人の中には、夫の趣味にモヤモヤしている側もいると思うからです。
ここからは私の想像が入りますが、4つはたぶん、同じ重さでは受け取られていません。
- ①車で出勤する … 効率が良くなっただけで、いない事実は変わりません。「短くしたからいいだろう」は通じない。何時に帰るかを先に伝えておくほうが効くはずです
- ②早く帰る … 「それは当たり前では」と思われる可能性が高い部分です。恩着せがましく数えないほうがいい
- ③帰宅後は全部やる … ここは効くと思います。ただし「やってあげている」感が出た瞬間に無効になります
- ④妻にも一人で出かける夜を作る … 4つの中で唯一、同じ通貨で返ってきたと分かる項目です
①〜③は、言ってしまえば全部「私の側の工夫」です。負担は減るかもしれませんが、相手の自由時間は1分も増えていません。増えるのは④だけです。
もうひとつ。「行っていいよ」と言われたからといって、モヤモヤがゼロとは限らないと思っています。わが家がそうだと言っているわけではなく、そういうものだろう、という話です。
さっきの数字が効いてくるのはここです。家事の77.4%を担っている側は、そもそも自分の趣味を検討の土俵に載せていないことがあります。「私は行きたい場所なんて特にない」と本気で言う人もいます。
だとすると④は、返しているというより土俵に載せる作業なのだと思います。行き先が決まっていなくても、まず夜を空ける。使い道はあとで決めればいい。
そして、いま夫の趣味にモヤモヤしている側の人へ。伝え方としては「やめてほしい」より「私にも同じ形をください」のほうが、たぶん通りやすいです。前者は取り上げる話になりますが、後者は増やす話なので、断る理由がありません。これは出ていく側からの想像なので、外していたらすみません。
チームの当番も、引き受けています
もうひとつ、続けるうえで効いていると感じているのが当番です。
うちのチームには、こういう役割があります。
- 体育館の鍵の受け取りと返却
- タイマーとチームボールの管理
これを2〜3人の班に分けて、当番制でみんなで回しています。私はそのうえで、毎月の練習日・場所・当番の班をまとめたPDFを作って共有する役をしています。
正直に書くと、この作業自体は数分で終わります。日程と班の情報を渡せば表の形にしてもらえるので、負担というほどのものではありません。大変なのは作ることではなく、続けて出し続けることのほうだと思っています。
ここからは私の推測ですが、1年半離れていたのに戻れたのは、こういう役を持っていたことも関係している気がしています。プレーだけの関わりだと、行かなくなった時点で接点がゼロになります。手間の少ない役をひとつ持っておくと、休んでいる間もチームとの線が切れません。
子どもは、見に来ません
20時開始なので、子どもたちが見に来たことは一度もありません。末っ子はもう寝る時間です。
なので「父親の背中を見せる」みたいな話にはなりません。そして、それでいいと思っています。
趣味は、子どものためにやるものではありません。自分のためにやっているものを「子どもにいい影響があるから」と言い換えはじめると、たぶん続かなくなります。自分が行きたいから行く。そのぶんを家庭に返す。それ以上の意味づけは、私には必要ありませんでした。
これから再開したいパパへ、3つだけ
- やめずに、離れる。無理な時期は必ず来ます。そのとき退会してしまうと、戻るハードルが一気に上がります
- 自分が出る日より先に、相手が出る日を決める。順番を逆にするだけで、話の通り方が変わります
- 返すものを、具体的な行動で決める。「感謝する」ではなく「帰ってきたら全部やる」まで落とし込む
まとめ
子育て中の趣味は、諦めるしかないものではありません。ただし「無理な時期はある」と認めたうえで、戻れる形にしておくことが前提になります。
- 3人目が生まれてからの1年半は、離れていた(やめてはいない)
- 戻ってからは、行く日の負担を減らす工夫と、返す工夫を決めた
- いちばん効いたのは、妻にも一人で出かける夜を作ったこと
- 手間の少ない役をひとつ持っておくと、休んでも戻りやすい
いま我慢している時期の人も、それは負けではないと思います。籍だけ残して、余裕が戻ったときにまた行けばいい。私はそうしました。
この記事で使った数字の出典
- 総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」(生活時間に関する結果・週全体平均)
- 内閣府男女共同参画局「令和5年版 男女共同参画白書」特-7図・特-8図

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